‐映画感想「スプリット」‐
こんにちは!
先日音声配信アプリ「standFM 」にて配信した映画レビューの台本を、
そのまま記事としても公開させていただきます✨
内容はまったく同じになりますが、音声よりも文字の方が…という方は読んでいただけると嬉しいです!
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今日ご紹介するのは、2017年に公開された、
アメリカのサイコスリラー映画「スプリット」!
監督は、「シックス・センス」「サイン」の、M・ナイト・シャマラン監督。
主演は、ジェームズ・マカヴォイ、ヒロイン役はアニャ・テイラー=ジョイです。
まず、作品名である「スプリット」を調べてみたところ、
日本語で「分裂すること」という意味でした。
そして、この映画の最大の特徴は、主人公含む女子高生3人を誘拐した犯人が、
「多重人格者」の男性であるというところです。
つまり、ひとりの人間の人格が、二つ以上に分かれる・分裂することから、
このタイトルなのだと思います。
ということで、映画の内容に入る前に、
「多重人格」について、私が知っている範囲で説明してみようと思います。
なお、今からお話することは、多重人格の当事者の方の発信をもとに、私なりに解釈したものであり、認識が誤っているところがあるかもしれません。
また、多重人格にかぎらず、心や体の病気は人それぞれ症状が異なるため、
すべてがこれに当てはまるということではありません。
あくまで一例としてお話しますが、不快に感じられる方がいましたら申し訳ございません。
☆
多重人格は、精神疾患の一つとされています。
本来その人が持つ人格とは別に、あるきっかけによりもう一つ、あるいはそれ以上の人格が生まれるという「心の病」です。
別人格の種類が1,2人という方もいれば、10人以上の人格を持つ方もいて、
それらは性格だけでなく、名前や年齢・性別までバラバラなんだとか。
また、人格ごとに異なる役割を担っていて、外に出て仕事をする人格、家の中で家事をする人格というように、場面ごとにそれを得意とする人格が現れ、一人の人間の身体を交代で占領しているのだそうです。
自分の中に別人格が生まれるきっかけは、本人にとってトラウマになるような、ものすごく辛い出来事であることが多いとのことでした。
たとえば、幼少期に受けた家族からの虐待や、学校でのいじめな・レイプなどです。
そうした状況から脱するために、無意識のうちに人格が乖離し、そこへ別人格が現れ、主人格に取って代わり、その苦しみを経験するのだそうです。
こう聞くと、別人格が、まるでピンチを救うヒーローのようにも思えてしまいそうですが、実際はそうではないようです。
悲しみや苦しみが大きすぎるあまり、生きるための手段としてやむを得ず、心の一部分を自分から切り離しているのにすぎないのかなと思います。
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また、社会生活においては、生きづらさを感じる場面も多いんではないかと思います。
なぜなら、人格は複数でも、あくまで身体は一つだからです。
さらに人格交代は、本人が意図しないタイミングで起きてしまうこともあるそうです。
もしも服装や髪型など、見た目に違いが無いとしたら、他者から見れば一人の人間が、その時々でコロコロと意見や態度が変えているようにしか見えないですよね。
本人をよく知らない人からすれば「一貫しない人」と一蹴され、距離を置かれてしまうかもしれません。
ただし、多重人格者の方のなかには、人格同士で意思疎通ができる方もいるそうです。
心の中で人格同士で会議をしたり、それができない場合は音声や動画を撮影しておいて、人格交代後にそれを見て、別人格の意見を聞くなどという方法です。
一人の人間の中に、複数の人間がいて、それぞれが違った主張を持っていて、それによって意見が食い違ったり、協力したりというのは本当に不思議だなぁと思います。
二重人格・多重人格というのは、アニメや小説、映画でよく扱われるテーマですが、
それに至る経緯を考えると、「ミステリアスでかっこいい」とは安易に言えないですね。
当事者としてYoutubeで発信をしている方は、映画や小説では「多重人格者」が犯罪者として扱われることが多いのが残念だとおっしゃっていました。
今回の映画でもやはり、猟奇的な誘拐犯として登場します。
ただ、「理解できない」「怖い」という描写にとどまらず、
なかには良識を持ち、暴走する別人格を止めようとするものもいたり、
後半にかけては、別人格が生まれたきっかけを思わせる回想シーンも挟み込まれているのが良かったなと思いました。
☆
それでは、長くなりましたが、映画の感想を話していきます!
なるべくネタバレはしないように気を付けます。
物語は、主人公の高校生ケイシーが、クラスメイトのクレアから、
誕生日パーティーへ招待されるところから始まります。
ケイシーとクレア、そして同じくクラスメイトのマルシアは、
クレアの父親の車で送ってもらうために車に乗り込みますが、
運転席に座ったのはクレアの父親ではなく、見ず知らずの男性でした。
驚いたクラスメイト二人はその男性が誰なのか問い質そうとしますが、
すぐさま催眠スプレーのようなものを吹きかけられ、眠らされてしまいます。
ケイシーはそっと車から脱出しようとしますが、
やはり同じように眠らされ、目が覚めると、窓のない密室に閉じ込められていました。
あるとき、ドアの向こうから男女が話し合うような声が聞こえてきて、
自分たちを「食糧」にするというような話が聞こえてきました。
さらにその直後に姿を現した男性は、女性の服を身に着けており、
先ほどの男女の話し声は、男性のひとりごとであったことがわかりました。
そこから3人は、男性を欺いて脱出を試みますが、次々に見つかって失敗し、
結局別々の部屋に監禁されてしまいます。
☆
万策尽きたかに思えたケイシーですが、
部屋に現れるたびに性格や話し方がまるきり変わる男性の様子を見て、
男性が多重人格者であることに気が付きます。
そして、その中でも危険性が低い子供人格である「ヘドウィグ」を利用して、
脱出する方法を探り始めが、次第に各人格が「もうすぐ彼がやってくる」等、
不穏な発言をするようになり・・・。
これが物語のあらすじです。
誘拐犯の男性を演じるのは、ジェームズ・マカヴォイです。
この男性は、23の人格を持つ多重人格者という設定ですが、
作中では主に、人当たりが良く、人格たちを統率している「バリー」、
潔癖症で几帳面な「デニス」と、その仲間で女性人格の「パトリシア」、
そして、9歳の子供人格「ヘドウィグ」を演じ分けています。
人格が出てくるごとに、名乗ったり、字幕で名前が表示されるわけではありません。
ですので、観ている側にはあくまで、その表情の変化や言葉遣い、声のトーンなどの情報しか与えられないのですが、それでも人格交代の瞬間には、「ぬるっと」目つきが変わり、「あ、変わったんだ」と気付かされました。
もしかしたら、音声を消していても、その表情だけで「今はこの人格が話しているんだな」と判別できたかもしれません。
それでも、たとえば潔癖症のデニスは普段眼鏡をかけていて、自分が触れる場所をハンカチで拭う癖があったり、パトリシアは女性らしいシルエットの洋服をまとって料理をしたり、ヘドウィグはウィンドブレーカーのような少年っぽい服装をしていたりと、
さらに特徴をわかりやすく表現されていました。
☆
三人を誘拐したデニスと、その仲間であるパトリシアは、他の人格からは「群れ」と呼ばれ、何かを企んでいる様子なのですが、それが何なのかは後半までわかりません。
ケイシーや、精神科医のフレッチャー先生が、一対一で彼と話している場面では、
いつ別人格に交代するかと、ハラハラしてしまいました。
別人格が別人格になりすますという描写もあったので、なおさらです。
物語がすすむにつれて、主人公のケイシーの回想シーンが挿入され、
そのなかで過去の出来事が明かされていき、最終的には、ケイシーのその過去が、彼女の運命を左右するカギとなります。
女の子たちが、閉じ込められた部屋から脱出しようと、ドアの隙間から通したハンガーでなんとかカギを空けようしたり、パイプだらけの地下室を逃げ回ったりするシーンなど、まるで自分もそこにいるかのような臨場感がありました。
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それから、面白いなと思ったのは、人格交代についての説明です。
男性のなかの人格たちは、部屋の中で並んで椅子に座っていて、
誰かひとりに照明(スポットライト)が当たることで、
その人格が身体の占有権を手に入れると説明されていました。
そのため、物語のなかで「照明」という言葉がたびたび出てきます。
映画の一番最後のシーンの意味は理解できず、Youtubeのネタバレ解説動画を見ました。
簡単に言うと、その後を思わせる終わり方でした!わかる人にはわかるムネアツなラストだったようです!
2年後に公開された「ミスター・ガラス」が本作の続編となっているそうなので、
そちらも近いうちに観てみようと思います!
☆
個人的には、興味のあるテーマを扱った作品で、程よいホラー要素もあり、
飽きずに楽しめるサイコスリラー映画でした!
見たことのある方は感想を教えていただけるとうれしいです!
見たことのないかたはぜひ見てみてください♪